大島紬は着物を着たことのある人なら誰でも知っている、日本が世界に誇る伝統絹織物になります。
しかし知名度はあるのですが、高価であるためどんな着物か馴染みがない方が多いのも事実です。
また本場以外でも大島紬は作られていて、本場とそれ以外の見分け方についてもわかりにくいところです。
そこでこのページでは大島紬がどんな着物であるか、そして見分け方をまとめています。
これから大島紬を着てみたい、勉強してみたいという人は参考にしてくださいね。
大島紬とは?
大島紬(おおしまつむぎ)は、奄美大島、鹿児島市、宮崎県都城市などで生産されている、絹織物になります。
世界三大織物の一つとして世界的に有名で、国内では結城紬、上田紬、牛首紬と並んで日本を代表する紬となっています。
なぜ多くの伝統工芸着物がある中で大島紬が有名なのかと言うと、高度な技術で作り込まれたきめ細かさが高く評価されています。
紬糸とは?
紬糸とは、絹糸の一種であり、それを用いて仕立てた着物や反物を「紬」といいます。
絹糸には「生糸」と「紬糸」の2つの種類があります。それぞれの特徴をまとめておきます。
生糸:蚕の繭から繰り出した極めて細い糸になります。それを合わせて織物とすると非常に光沢と柔らかさがあり、高級ネクタイなどとして製品化されています。
紬糸:生糸を作るには適していない繭から糸を引き伸ばし、真綿(コットンではなく絹のわた)から取り出される糸になります。引き伸ばし方は袋真綿と角真綿の2種類があります。紬糸は生糸ほどではありませんが美しい光沢があります。
木綿・麻とはどう違う?
木綿はアオイ科である「ワタ」を利用した植物性の繊維です。綿(コットン)は洋服でもおなじみで、原価も安くなります。
麻糸は苧麻(からむし)の繊維、亜麻をもとにした繊維で、こちらも植物性の繊維になります。通気性がよく夏の生地として利用されます。
一方、絹糸は蚕の繭から取り出すため、動物性の繊維になります。羊毛のウールなどと同じ、動物性繊維なのです。
製造工程は非常に複雑
大島紬の製造工程には、なんと30~40もの工程があり、それぞれの職人が担当して生地が作られます。
製作開始から完成までは半年~1年を要します。そのため着物作家が一人で製作できるものではないのです。
大島紬には模様のある絣糸(絣タテ糸・絣ヨコ糸)、無地の地糸(地タテ糸・地ヨコ糸)を使用します。
一番の特徴としては、奄美大島に生息する車輪梅(方言でテーチ木という)を用いたテーチ木染めと、泥田につける泥染めがあります。
奄美大島の泥田には鉄分が多く含まれていて、テーチ木のタンニンと化合して美しい黒褐色が染色されるようになります。
大まかな製造工程の流れは以下のようになっています。
図案製作
ここで図案に沿って必要な糸の量が決められます。
糸繰り・整経
専用台で必要な糸の本数と長さを整えます。
糊張り
屋外で整えた絹糸を「いぎす(海藻糊)」という糊で固め、天日干しで乾燥させます。
しめばた
締機(しめばた)を用いて図案に沿って絣の模様を作っていきます。木綿糸を用いて織り締める作業も行います。
染色(テーチ木染め・泥染め)
テーチ木のチップを釜に入れ、煎じた液に絹糸を浸けて染色します。この作業で絹糸は赤茶色に染まります。
その後、泥田に浸けます。これによりテーチ木のタンニンが泥田の鉄分と化学反応を起こして味わいのある黒褐色となります。
絹糸加工
織り職人へ渡す前の、絹糸の準備加工です。綿糸をほどいたり色を差すなどして1本1本の絣糸を完成させます。
はた織り
高機(たかばた)という手織りはたで製織していきます。この工程で1反に約1ヶ月かかります。
検査
本場奄美大島紬協同組合の検査員が24項目の厳しいチェックを行います。
完成
大島紬の染色種類
大島紬には染色の方法で数種類に分類されています。
泥大島 | 伝統な大島紬になります。泥染によるツヤと、白餅による柄が特徴です。 |
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泥藍大島 | 植物藍で先染めした絹糸を泥染めし、絣部分が藍色になります。 |
色大島 | 化学染料を用いて染色し、地色・絣模様ともに様々な色を表現できます。 |
中間色大島 | 草木染大島と呼ばれます。テーチ木以外の草木で染め、泥焙煎を加えて薄い茶系のナチュラル色を表現しています。 |
白大島 | 鹿児島の白土を白泥にして染めた織物です。白地に絣模様が入っています。 |
大島紬の見分け方
大島紬は、生地だけを見ても素人には奄美大島産なのか鹿児島産なのか判断しにくいものです。
しかも大島紬は手織りと機械織りに分かれています。もちろん手織りの方が高価になります。
そこで、製造後に厳しい検査で合格した大島紬には、産地と製造方法を記した「証紙」が貼ってあります。
その証紙から、産地と製造方法を確認することができます。
奄美大島産
奄美大島で製造された「本場奄美大島紬」の証紙になります。手織りと機械織りがあります。
■手織り
■機械織り
鹿児島産
鹿児島市や周辺で製造された「本場大島紬」の証紙になります。
鹿児島産「本場大島紬」の証紙は手織りも機械織りも似ているタイプがあるので難しいですが、右下にある発行者を見れば見分けがつきます。
■手織り
手織りの発行者は「鹿児島県本場大島紬協同組合連合会」と書かれている証紙になります。
■機械織り
これ以外の産地にも証紙はありますが、廃止やデザイン変更があるため、それぞれに確認が必要になります。
大島紬のお手入れ
最後に大島紬を使用した後のお手入れについてまとめておきます。
- 使用後はほこりをはらう。
- ハンガーで2時間ほど吊るし、熱を発散させる。
- 湿気に注意して保管する。
大島紬は正絹の着物なので湿気に弱いです。使用後は乾燥させてから収納します。11月頃には虫干しをするのも効果的です。
また汗が染み込んだ箇所は、固く絞ったタオルで拭くか、アンモニア水を少し混ぜたお湯で拭き取ります。
醤油やソースなどの汚れは水を含んだタオルでしっかり拭きます。下にも汚れて大丈夫なタオルを敷いておきます。
酸には非常に弱いので、果汁などがかかった場合はすぐにぬるま湯で落とし、専門のクリーニング店へ相談しましょう。
まとめ
- 大島紬は奄美大島や鹿児島が本場
- 紬糸によって作られる
- 完成までは半年~1年
- 手織りと機械織りの証紙がある