着物染み抜きイメージ

大切な着物は汚さないようにみなさん気をついていると思いますが、どうしても汚れはついてしまいます。

特に、衿部分は最も汚れがつきやすくなります。

着物クリーニングはプロにおまかせするのがベストですが、預ける時間と費用もかかります。

「応急処置として自分でシミ取りをしたい」

というケースもあるかと思います。

そこで、このページでは自分でできる染み抜きの方法をご紹介しています。困った人は参考にしてくださいね。

※月日が経過した黄ばんだシミは家庭では除去ができないので専門店に依頼しましょう。

シミには何種類もある

実はシミと言っても、その成分はバラバラで様々な種類があります。

その成分ごとに染み抜きの方法が違ってくるので、この種類を把握することは重要になります。

よくあるシミの代表例をまとめるとこのようになります。

シミの代表例
  • 料理
  • 調味料(醤油・ソースなど)
  • 飲み物(お茶・コーヒー・ワインなど)
  • インク(油性・水性)
  • 口紅・ファンデーション

いずれの成分でも、付着してからの時間でシミの落ち方が変わってきます。

時間が経つほど、生地の繊維に染み込んでいくので処理は難しくなります。

何年も前についたシミの場合、シミは酸化して黄色や黒に変色していきます。こうなるとプロの業者であっても染み抜き処置が難しく、料金も高くなります。

できるだけ付着した後すぐに処理をするのが理想なのです。

油性か水溶性か

シミの種類は油性水溶性に分類できます。

例えば食べ物がはねた汚れは料理によりますが、概ね油分の場合が多いです。調味料は醤油は水溶性となり、ソースは油分と水溶性の両方が含まれています。

お茶・コーヒー・ワインは水溶性で油分はありません。

インクは油性か水溶性かで分かれます。汗は水溶性ですが汗汚れには皮脂も含まれています。

口紅・ファンデーションは油性になります。(ファンデーションは商品によって水溶性の成分が多い場合があります)

表でまとめるとこのようになります。

料理油性が多い
醤油水溶性
ソース油性・水溶性
お茶・コーヒー・ワイン水溶性
インク油性・水溶性
水溶性・油性
口紅・ファンデーション基本的に油性

それぞれに使用する溶剤

シミが油性か水溶性かに分類できたら、次に使用する溶剤を決めます。

使用する溶剤
  • 油性シミ:リグロイン
  • 水溶性シミ:洗剤液(台所用中性洗剤を1滴垂らした水)

油性にはリグロイン、水溶性には台所用中性洗剤をわずかに入れた水を溶剤として染み抜きに使用します。

油分の染み抜きをする場合、よくベンジンという有機溶剤が使用されますが、リグロインの方が蒸発が遅い特徴があります。

蒸発までの時間がベンジンより長いため、下記で説明していますがボカシ作業がしやすくなります。作業に慣れた方はベンジンを使っても大丈夫です。

リグロイン、ベンジンともに薬局やネット通販で購入することができます。

油性シミの落とし方

リグロインを使った、油性シミを落とす手順をご紹介します。

リグロインを使った染み抜きの作業を簡単に説明すると、下にタオルを敷いて、着物のシミ部分をリグロインを染み込ませた布でトントンと叩く作業を繰り返します。あとはドライヤーの冷風で乾かせば完了です。

具体的な流れを説明すると以下のようになります。

  1. リグロインの準備

    小さい容器にリグロインを少量入れておきます。

  2. タオルを敷く

    着物の下に大きめのタオルを二重に敷きます。

  3. 着物を敷く

    タオルの上に着物を敷きます。

    床なら膝、テーブルなら胸で着物の端を抑えます。(作業時に生地をピンと張るため)

  4. リグロインをつける

    ガーゼなど柔らかい布をリグロインに浸します。

  5. シミ部分につける

    浸した布でシミ部分をトントンと軽く何度も叩きます。(汚れを下のタオルに移す作業になります)

    浸しては叩く作業を2、3回繰り返します。

  6. ボカシ作業

    リグロインによる輪染み残りを防ぐ作業です。

    着物の濡らした範囲のフチを、布でこすって伸ばし、濡れたフチをボカシます。

    ※正絹を水でこするのは厳禁ですが、リグロインなどの有機溶剤であれば多少こすっても生地は傷みません。

  7. 乾燥

    ドライヤーの冷風で乾かします。

    ※温風は生地が傷むので厳禁です。

  8. さらに乾燥

    生地の内部まで乾燥させるため、着物ハンガーなどで半日陰干しします。

    完全に乾燥させてから収納します。

シミの種類で汗のような油性と水溶性の両方が含まれる場合は、まずこの油性シミの落とし方をしてから、水溶性シミを落とす作業をする必要があります。

水溶性シミの落とし方

※ここでは正絹の場合の染み抜きをご紹介しています

水溶性シミには、台所用中性洗剤を15倍で薄めた水を使用します。(ここでは洗剤液と名付けて説明を行います)

15倍というのは作るのが難しいですが、コップ半分くらいの水に、台所用中性洗剤を1滴垂らすとちょうどその濃度の水になります。

水溶性シミの落とし方を簡単に説明すると、洗浄液を少しつけた布をシミ部分に当て、次に乾いた布で水分を吸い取るように当てます。

具体的な流れは以下のようになります。

  1. 洗浄液の準備

    小さい容器に洗浄液を入れておきます。

  2. 布を当てる

    洗浄液を軽く浸した布でシミ部分を当てます。

    ※スレが出来てしまうので絶対にこすらないようにします

  3. 乾いた布を当てる

    乾いた布を当て、洗浄液の水分と汚れを吸い取ります。

水溶性シミは簡単な処置になりますが、正絹は水でこすると生地が傷んでスレが発生しますし、水分で生地が縮むのでこれくらいの処置が無難です。

この方法でシミが残る場合は専門店へ依頼しましょう。

気になる専門店の料金はこちら↓
絞り・御召・ちりめんは要注意!

絞り・御召・ちりめんは糸に撚りがかかっているため水分は厳禁です。シミ部分に乾いた布を当てて水分を取るだけにしておきましょう。

高度な水溶性染み抜き

水溶性シミの染み抜きには霧吹きを使った高度な方法もあります。

シミ部分を霧吹きで広く吹きかけて洗浄液を当てます。そして乾いた布を当てて吸収させ、もう一度霧吹きを吹きかけます。

この方法では広い範囲に霧吹きをするため輪染みを消すことができるメリットがありますが、生地は縮みます。

そのため最後に生地の端を抑えて上手く伸ばしながらアイロンを当てることで、縮む前に戻す工程が必要になります。

それでも金糸や金銀箔が使われている部分だと処置は難しいです。

このような染み抜きはプロにおまかせするのがベストです。

ポリエステル生地なら水洗い可

水洗いできない正絹の着物での染み抜きをご紹介しましたが、ポリエステル素材や木綿素材の着物であれば水洗いができます。

「洗濯表示」のタグに「洗濯機マーク」「手洗いマーク」があれば水洗い可能です。洗濯機なら手洗いコース・時短コースなどソフトに洗うコースがおすすめです。

水溶性の汚れであれば気兼ねなく手洗いで綺麗にしましょう。

自分で難しいシミは専門店に

基本的に付着してすぐのシミは落ちやすいのですが、それでも自分では難しい種類のシミがあります。

例えばワインです。濃い赤ワインの色が染み込んでしまうため、漂白処理が必要になることが多いです。

料理ではタンパク質の汚れ(牛乳や卵)は確実に落とすには酵素処理、インクではゲルインクだと特殊な処理が必要になります。

また月日が経って酸化した黄色いシミも、素人では落とせません。

このような染み抜きは少し料金は高くなりますが、プロにおまかせしましょう。

お店の選び方も、チェーン店よりも染み抜きのスキルが高いお店を探すことが失敗しないコツになります。

まとめ

  1. シミの種類で染み抜き方法が異なる
  2. 油性シミはリグロインで落ちる
  3. 水溶性シミは縮みに注意
  4. 高価な着物はプロにまかせよう

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