露出補正は写真の明るさを変える基本操作になります。
しかし、「いつも使う露出補正だけど、なぜ写真が明るくなったり暗くなるの?」
と初心者には仕組みがわかりにくい操作でもあります。
このページでは露出補正の仕組みと使い方を解説しているので参考にしてみてください。
また理解が難しい露出補正とISOとの関係も解説しています。
露出補正の操作
露出補正はこのマークのボタンで行います。
(機種によっては露出補正操作は異なります)
プラスにすれば写真は明るく、マイナスにすれば写真は暗くなります。
露出計は通常1/3段ずつ変更できるようになっています。
1段変化させると、センサーに当たる光量は2倍、もしくは1/2倍になり、シャッタースピードも2倍速くなったり遅くなったりします。
1段の明るさの変化を「1EV」、1/3段の変化を「1/3EV」という単位で表されることもあります。
明るくなり過ぎると「露出オーバー」、暗くなり過ぎると「露出アンダー」という言い方をします。
露出補正が使えるモード
露出補正の操作は、カメラのモードダイヤルが絞り優先モード、シャッター速度優先モード、プログラムオートのときに使用できます。
- プログラムオート
カメラ操作をおまかせにしながら、撮影者が絞り(F値)とシャッタースピードのバランスを変更することもできるモードです。 - 絞り優先モード
撮影者が絞り値(F値)を設定し、カメラがシャッタースピードを決めるモードになります。 - シャッター速度優先モード
撮影者がシャッタースピードを設定し、カメラが絞り(F値)を決めるモードになります。 - マニュアルモード(ISOオート時)※一部の機種では露出補正が使えません
撮影者が絞り値・シャッタースピードを設定するモードになります。
いずれのモードも、カメラが周囲の明るさとシャッター速度・F値・ISOのバランスから数値を決定して明るさを決めることになります。
このカメラが決めた明るさを「AE」(自動露出)といいます。
撮影者はこのカメラが決めた明るさに対して、さらに露出補正という操作で明るさを変えることができます。
近年はマニュアルモードで露出補正が使える機種が増えていますが、まだ一部の機種では使えません。
露出補正の仕組みとは
上の3つのモードで露出補正をした場合の変化をまとめてみました。(※SS:シャッタスピード)
プログラムオート | |
---|---|
露出補正+ | 絞り・SSが変化 |
露出補正- | 絞り・SSが変化 |
(開放絞りになるとSSのみ変化)
絞り優先モード | |
---|---|
露出補正+ | SSが1/3段ずつ遅くなる |
露出補正- | SSが1/3段ずつ速くなる |
シャッター速度優先モード | |
---|---|
露出補正+ | 絞りを1/3段ずつ開く |
露出補正- | 絞りを1/3段ずつ絞る |
プログラムオートは基本的に絞り・シャッタースピードのバランスが変わって明るさが変化しますが、カメラの機種によってその変化は異なります。
そして絞り優先モードでの露出補正は実質シャッタースピードの操作をすることになり、シャッター速度優先モードの露出補正は絞り値の操作をすることになります。
仕組みが複雑そうな露出補正ですが、実際にはプログラムオート以外はシンプルな動作になっていることがわかります。
露出補正の使用例
実際に露出補正を使ったケースをご紹介します。
例えば木の上にある花を<絞り優先モード>で撮る場合、撮影者がF値を5.6、ISOを100に設定したとします。
この場合カメラがシャッタースピードを決定して写真の明るさが決まることになります。
ここで、カメラが決めたシャッタースピードは1/2000秒だったとします。
すると設定値はこのようになります。
絞り優先モード(露出補正±0) |
---|
F5.6 ISO100 SS1/2000 |
しかしこのまま(露出補正±0)で撮影したところ、写真が暗く写ってしまいました。
構図に空が入るとカメラは明るい部分が多いと判断するため、暗く写す傾向があります。
そこで、撮影者は露出補正を+2/3段に設定しました。
この操作によってシャッタースピードは1/2000秒から1/1250秒へと自動変更されます。
絞り優先モード(露出補正+2/3) |
---|
F5.6 ISO100 SS1/1250 |
この設定で撮影すると、適正な明るさの写真になりました。
シャッタースピードが遅くなったことで、センサーに当たる光が増えたため写真が明るくなりました。
(ISOオートにしている場合は露出補正操作によってISO値が変化します)
このように露出補正はカメラが決めたF値・シャッタースピード・ISOのバランスを撮影者が変更して明るさを変える(補正する)操作となります。
明るいカメラ・暗いカメラがある
カメラは周囲の明るさからF値・シャッタースピード・ISOの数値を調整しているのですが、実際は機種によってそのプログラムが異なり、明るさに差があります。
何台もカメラも使った経験のある人ならわかると思いますが、少し明るく写るカメラ、少し暗く写るカメラというのがあります。
例えばある風景をニコンとキヤノンのカメラで同時に撮った場合(露出補正±0)、このような設定値になることがあります。
ニコン | キヤノン |
---|---|
F5.6 ISO100 SS1/320 |
F5.6 ISO100 SS1/400 |
この例ではニコン機がシャッタースピード1/400秒だったのに対し、キヤノン機は1/320秒となっていて、1/3段シャッタースピードが遅いキヤノン機の方が少し明るく写ることになります。
このようにカメラの機種によって特徴があるので、それを理解しながら自分の好みで明るさを調整するのがいいと思います。
露出補正が必要なケース
先ほどの例でも紹介しましたが、カメラの判断ではどうしても見た目の明るさとは異なる写真が撮れる場合があります。
■ケース1
「お寺を写したらなぜか写真が白っぽくなった」
この理由は黒っぽい木材をカメラが暗い被写体と判断し、明るい数値を決めてしまったためです。
この場合は露出補正をマイナスにして撮影するのがベストです。
■ケース2
「お寺を写したら真っ黒に写ってしまった」
同じお寺でも真逆のシチュエーションになります。
これは日没直後の太陽の方向であるため空が明るく、カメラがその明るさに引っ張られて暗くしようと判断した結果になります。
人物の撮影でも後ろに太陽があると人物が真っ暗に写ることがあると思いますが、それと同じ原理になります。
この場合は露出補正をプラスにして撮影します。
露出補正が狂いやすいケースまとめ
他にも見た目とは異なる明るさに写るケースがあるのでまとめてみました。
暗く写る撮影状況
(この場合露出補正をプラスにして撮影します)
- 曇り空が構図に入る
- 太陽が背後にある逆光で人物などを撮る
- 晴れた日に桜を下から撮影する
- 白い壁を撮る
- 雪一面の景色
曇り空は白いためカメラは明るく写ってしまうと判断し、写真を暗くします。
このように暗く写る時に共通しているのは、写真に明るい部分が含まれている場合になります。
明るく写る撮影状況
(この場合露出補正をマイナスにして撮影します)
- 寺院を撮る(写したい部分が日陰の状態)
- 照明のない薄暗い建物内を撮る
- 黒猫を撮る(他にも黒い犬、動物園のゴリラなど)
- 蒸気機関車を撮る
- 黒い服の人物を撮る
明るく写る場面では共通して黒っぽい被写体が含まれている時に起きます。
露出補正の操作が上達すれば、構図を合わせる段階で露出補正をプラスにしよう、マイナスにしようと気づくようになります。
あえて露出補正をプラスに
赤ちゃんや女性など、被写体によっては少し明るいくらいが綺麗に写ることがあります。
料理も明るめの方が美味しいに見えます。(露出補正だけでなく自然光の当たり方も重要になります)
他にはこのような被写体が露出補正をプラスにして撮影するのがおすすめです。
- 赤ちゃん
- 女性
- 日差しで透けた葉や花
- 果物
- 料理
ミラーレスの電子ファインダーは便利
一眼レフの光学ファインダーの場合、露出補正の操作をしてもガラスを通して被写体が見えるファインダー内に変化はありません。
そのため撮影後に写真を確認してから、露出を補正してもう1枚撮影することになります。
しかし、ミラーレス一眼の電子ファインダーであれば露出補正の変化が映像に表示されます。
一眼レフでもライブビューに切り替えると露出補正の変化が確認できます。
シャッターを切る前に明るさが確認できれば、露出の失敗は起きにくくなります。
露出補正とISOとの関係は?
ISO値を上げると、カメラはセンサーに当たった光をトランジスタによって増幅させ、多くの光を取り込んだような状態にすることができます。
増幅する量を数値化したものが「ISO」であり、数値は100、200、400、800、1600…と数値が大きくなるほど光量が増えることになります。
(デメリットとして電気ノイズが発生し画質が低下します)
光量は増えますが<絞り優先モード>、<シャッター優先モード>、<プログラムオート>では写真が明るくなるわけではありません。シャッタースピードが速く調整されるため、ISOを上げても写真の明るさは一定に保たれます。
これらのモードでISOを上げることはシャッタースピードを速くして手ぶれ(または被写体ぶれ)を防ぐのメリットがあります。
一方、露出補正はカメラが決めたF値・シャッタースピードのバランスを撮影者が変更して写真の明るさを変化させます。ISOとは違って絞りを開いたりシャッタースピードを遅くすることで写真を明るくします。
露出補正は直接センサーの光量を増やすISOとは写真を明るくするアプローチが異なっていることになります。
<絞り優先モード>などでISOオート設定を使用している場合は、露出補正を操作するとISO値が変化して明るさが変わります。
またカメラの機種によっては<マニュアルモード>で露出補正が使用でき、その場合はISO値が変化して明るさが変化します。
まとめ
- 露出補正は撮影者がF値・SS・ISOのバランスを変更する操作
- シーンによって明るく写ったり暗く写ったりする
- カメラの機種によって露出の明るさには違いがある
- ISOとは明るくするアプローチが異なる