一眼レフのマクロ撮影では花のシべを大きく写したり、水滴を拡大して撮影したり、ふだん目に見えない世界が広がる楽しさがあります。
ただマクロ撮影は難易度が高く、
「AFで撮影したがピント合わせがうまくいかない」
「花を綺麗に撮りたいのに風が吹いてまともにピントを合わせられなかった」
というような感想もよく聞かれます。
このページでは初心者でもできるマクロ撮影のテクニックや各メーカーのマクロレンズをまとめているので参考にしてみてください。
マクロ撮影の設定
絞り優先モードを使う
<絞り優先モード(A)>にすることで、F値(絞り値)を操作することができます。
F値を小さくするほどピントが合う範囲が狭くなり、ボケ量が増えます。
ただマクロ撮影のような接写ではもともとボケ量が多いため、常にF値を最小にする必要はありません。
ピントが合う範囲をコントロールしながら、イメージしている写真に近づけていきます。
モードダイヤルにあるマクロモード(花のマーク)はここでは使用しません。このモードではカメラが自動でF値を決定し、状況によりフラッシュも発光してしまうためです。
ピント合わせはMF
マクロ撮影ではミリ単位でピント合わせを行うため、MF(マニュアルフォーカス)が便利です。
AF(オートフォーカス)でも撮れないことはありませんが、非常に小さな被写体をAFで合わせるのは困難です。
MFで一度合わせ、あとは体を前後に動かして微妙なピント位置を合わせる方が楽に撮影ができます。
(機種によりボディ側や操作画面でMFに切り替えます)
これでシャッターボタンではピント合わせをしなくなります。
そしてライブビューの拡大機能を使い、ピントリングを回してピントを合わせます。
ファインダーよりもずっと大きく確認できるのでピント合わせがしやすくなり便利です。
花ならシベの先端や、水滴なら映り込みが綺麗な部分などを狙ってピントを合わせます。
一眼レフの場合は内部のミラーが上がっているライブビュー状態でシャッターを切るのがおすすめです。ファインダー撮影だと内部のミラーショックで微量なブレが発生する可能性があるためです。(ミラーレス一眼にはミラーは入っていないのでミラーショックは起きません)
風対策にはシャッタースピードを上げて連写する
屋外のマクロ撮影で一番の天敵は”風”です。
ミリ単位でピントを合わせないといけないのに、風が吹いて簡単にピントがズレてしまうのです。
こんな場合は少しでも被写体ブレを防ぐためISO感度を上げてシャッタースピードを速くします。
(日当たりが良くすでに高速シャッターになっている場合は不要です)
また連写モードにして何枚も撮影します。
風が弱まるタイミングを待って素早くシャッターを切り、たくさんの写真の中からベストな1枚を残します。
この方法はプロの写真家にも使われています。
液晶を見やすくする
日当たりがいい場所では液晶が見えにくくなります。
そんな場合はいくつか対策があります。
- 液晶の明るさをMAXにする
- 身体だけ向きを変えて日差しを遮る
- 上着で覆って日差しを遮る
- 別売りの液晶フードを付ける
メニューにある液晶の明るさをMAXに設定することで、ある程度見やすくなります。
(明るくしている間はバッテリー消費が大きくなります)
あとはアナログな対処法ですが、身体や服などで陰を作る方法があります。
また別売りの液晶フードを使う方法もあります。
安価な商品なのでどのカメラでも確実に使用できるとは限りませんが、液晶が見づらくなる場面が多いのであれば、口コミをチェックして購入してみるのもよいと思います。
実際に撮影してみる
ニコンD3400にマクロレンズ「AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G」を装着しました。
今回はこのような花壇にある花から、気に入った角度を探します。
日が当たる状況ではなく十分なシャッタスピードではなかったため、ISOを400に上げてシャッタースピードを速くしました。
<その他作例>
こちらの作例はマクロレンズの最短撮影距離で大きく写したものです。
背景の色合いも緑とオレンジが入り良いバランスになりました。
薔薇の綺麗な渦を見つけたのでマクロレンズで真上から撮影しました。
形の綺麗な薔薇を様々なアングルで撮るのもおすすめです。
望遠マクロで昆虫を狙う
50mmマクロレンズだと被写体にくっつくような距離で撮影しなければ等倍になりませんが、中望遠~望遠マクロレンズなら15cmなど少し距離が空いても等倍になるため昆虫撮影に使いやすいです。
てんとう虫であればゆっくり動きを追いながら構図を決めることができます。
蝶になると少しコツが必要です。
花に止まった瞬間に近寄ると逃げてしまいますが、蜜を吸い始めるとすぐには逃げないのである程度近寄ることができます。
美しい羽根を見てしまいますが、基本は蝶の眼にピントを合わせるようにして撮影をします。
難易度が高いのはトンボで、15cmなど近寄るとすぐに逃げてしまいます。
等倍撮影は難しいので、大きくは写らないですが距離を空けて撮影を行います。
この場合は望遠ズームレンズで撮るのと同じ大きさになるので、このような昆虫撮影には通常の望遠レンズを用意する人もいます。
すぐに動いてしまう昆虫を撮影する場合は三脚は役に立ちません。手持ち撮影でカメラの手ブレ補正機能に頼って撮影を行います。
(昆虫撮影ではフラッシュを焚いてシャッタースピードを上げる方法もあります。意外と昆虫はフラッシュの光では逃げません)
水滴は雨上がりがチャンス
雨に濡れたしっとりした草花も魅力的な被写体です。
降雨の中では撮影できませんし(防水タイプを除く)、雨が上がってしばらくすると草花の水滴が落ちてしまいます。
そのため雨が上がったすぐのタイミングがベストです。
今にも垂れ落ちそうな水滴も雰囲気がありますし、葉っぱによってはボールのような大きな水滴が残っていることもあります。
水滴が大きいほど、周囲の景色が小さく写り込んでいて、それをマクロで狙うのも面白いです。
水滴を被写体にすると、雨が楽しみになりますよ。
水滴写真は部屋でも撮れる
雨上がりに撮る水滴写真は室内でも撮影ができます。
花瓶に立てた花(水滴が乗りやすいガーベラなどがおすすめ)に、スポイトで花びらに1滴乗せます。
すぐに上手く乗らないこともありますが、何度も試しているとベストな水滴になります。
あとは三脚でカメラを設置して水滴を狙うだけです。
背景にも花を置いて色を入れたり、構図を自由に考えることができるのも室内撮影のメリットです。
本格的にマクロ撮影をするなら三脚とレリーズを用意
三脚とレリーズを使えば手ブレを防ぐことができるので、本格的なマクロ撮影をする場合には必要になります。
特に望遠マクロレンズでは手ブレしやすいので三脚がないとブレ写真が増えてしまいます。
花の撮影では低い位置にある被写体になるので、三脚も背を低くして撮影を行います。
センターポールを外せる三脚なら、最低高は20cmなどかなり低い位置で撮影することができます。
また背の低いマクロ専用三脚も販売されています。
三脚を使うことで姿勢が楽になるメリットもあり、長い時間撮影する場合には三脚は非常に便利です。
シャッターは切る際のわずかなショックも避けたいのでレリーズケーブルやリモコンを使います。
おすすめのマクロレンズ
マクロレンズは各メーカーから出ていますが、画角の違いや手振れ補正の有無など、購入する際にはチェックしておく必要があります。
メーカーごとに人気のマクロレンズをピックアップしてみました。
キヤノン
EF-S35mm F2.8 マクロ IS STM <発売日2016/6/29><重量190g><実売45,000円> LEDライトが前面に内蔵された、画期的なマクロレンズです。手振れ補正機能付き。小物撮影でLEDを光らせることでより鮮やかに写せます。56mmの標準レンズとしても使用できて便利ですが、デメリットとして等倍撮影をするには被写体に接近する必要があります。 |
EF-S60mm F2.8 マクロ USM <発売日2005/3/17><重量335g><実売45,000円> 少し古いマクロレンズになります。ウルトラソニックモーター内蔵のためオートフォーカスが俊敏です。手振れ補正機能はありません。 |
EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM <発売日2016/6/30><重量130g><実売35,000円> キヤノンのミラーレス一眼EOS Mシリーズ対応のマクロレンズになります。EOS向けと同様にLEDライト内蔵が特徴です。手振れ補正付きで安心してマクロ撮影ができます。45mm相当の画角となり標準レンズとしても使用ができます。ただF値は3.5のため通常撮影で使用するとボケ量は小さくなります。 |
ニコン
AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G <発売日2011/7/12><重量235g><実売35,000円> DXフォーマットのAPS-C機専用マクロレンズです。コンパクトで軽量、低価格で標準画角としても使えるため人気のマクロレンズになっています。手振れ補正はついていません。 |
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED <発売日2008/3/14><重量425g><実売70,000円> ニコンで定番ともいえるマクロレンズです。解像度が高く開放からシャープな写りで、フルサイズでは標準画角のレンズとしても使用されています。 |
AF-S DX Micro NIKKOR 85mm f/3.5G ED VR <発売日2009/12/4><重量355g><実売60,000円> DXフォーマットのAPS-C機専用マクロレンズです。ボケの大きさが特徴の128mmの中望遠画角として使用できます。手振れ補正機能がついています。 |
ソニー
※機種によりボディ側に手ブレ補正があります
FE 50mm F2.8 Macro <発売日2016/9/24><重量236g><実売50,000円> Eマウントのフルサイズ向けマクロレンズです。標準単焦点レンズとしても使える画角で、小型軽量が特徴です。APS-C機に装着した場合は75mm相当の画角になり比較的使いやすい画角になります。 |
E 30mm F3.5 Macro <発売日2011/9/22><重量138g><実売25,000円> Eマウントの標準画角マクロレンズです。絞り開放は3.5と明るくありませんが、低価格のため人気のレンズとなっています。 |
50mm F2.8 Macro <発売日2006/7/21><重量295g><実売45,000円> Aマウントのマウントレンズです。コントラストの効いた高画質と軽量化が評価されていて、フルサイズでは標準画角、APS-C機では75mmで使用できます。 |
DT 30mm F2.8 Macro SAM <発売日2009/10/22><重量150g><実売20,000円> AマウントのAPS-C機専用の小型軽量マクロレンズです。45mm相当の標準レンズとしても使用できます。 |
ペンタックス
※ボディ側に手ブレ補正があります
HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited <発売日2013/9/20><重量214g><実売45,000円> Kマウント対応の標準マクロレンズです。軽量コンパクトで扱いやすく人気があります。開放から解像度が高く絞っても画質低下が少ないのが特徴です。 |
smc PENTAX-D FA マクロ 100mm F2.8 WR <発売日2009/12/25><重量340g><実売60,000円> 簡易防滴構造でアウトドアで使いやすいマクロレンズです。フルサイズ向けのレンズで、APS-C機では153mmの望遠画角になります。 |
富士フィルム
フジノンレンズ XF60mmF2.4 R Macro <発売日2012/2/18><重量215g><実売60,000円> Xマウント対応で唯一のマクロレンズです。撮影倍率は0.5倍のハーフマクロになります。手ブレ補正はついていません。高画質で小型軽量が特徴ですが、AFが遅い欠点があります。 |
オリンパス・パナソニック
※一部の機種を除きボディ側に手ブレ補正があります
M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro <発売日2016/11/18><重量128g><実売30,000円> 非常に軽量で最大撮影倍率が1.25倍と大きく写せるのが特徴のマクロレンズ。絞り開放は3.5なのでマクロ用途以外ではボケ量は大きくありません。 |
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro <発売日2012/10/5><重量185g><実売45,000円> 120mm相当の中望遠マクロレンズで、防塵・防滴性能を備えているのが特徴。APS-C機のレンズに比べて中望遠でも軽量で扱いやすいです。 |
LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S. H-ES045 <発売日2009/10/23><重量225g><実売60,000円> ライカブランドのマクロレンズです。マイクロフォーサーズとしては初のレンズで、現在の傾向と比較すると大きくやや重たい部類に入ります。 |
まとめ
- 風対策にはISOと連写
- ライブビュー拡大でピントを合わせる
- F値を下げてふんわりした写真に
- 雨上がりも絶好の撮影タイミング