一眼レフのファインダーを覗くと機種によってファインダー像の見え方が違っていますが、これはファインダー倍率が機種によって異なるためです。
高級機は大きく見え、入門機は小さく見えると思います。
ただ実際には同じ価格帯でもファインダー像の大きさが異なることがあります。
そのため、カメラの購入を考えている人はファインダー倍率も検討して選ぶことをおすすめします。
このページではファインダー倍率と視野率の説明、機種別のランキングをご紹介しています。
ファインダー倍率とは?
ファインダー倍率とは、焦点距離50mmのレンズを装着して見えるファインダー像の大きさを表した数値です。
「1倍」は実際に目で見える大きさであり、基準となります。
プロ向けなどの高級機は「0.7倍」以上の大きな数値になっています。
入門機の場合は「0.5倍」など小さい数値になっています。
このように、基本的には上位機種になるほどファインダー像が大きく見えます。
ミラーレス一眼の場合は電子ビューファインダー(EVF)を搭載しているため、入門機でも0.7倍などある程度大きくなっています。
カメラの仕様表では、焦点距離50mmレンズをつけてピントを遠くに合わせた無限遠状態、視度調整は初期状態で見える像の大きさを数値で表示しています。
倍率の小さい方が大きい??
メーカーの仕様表に書かれたファインダー倍率は、そのまま読むと間違えやすいので注意が必要です。
例えば、ニコン中級機のD7500(APS-C)はこのように書かれています。
一方、高級機のD850(フルサイズ)です。
この数値を比べると、中級機のD7500が「0.94倍」なので大きく見えるように思いますが、実は逆でD850の方が大きく見えます。
これはカメラによってセンサーサイズが違うにもかかわらず、メーカーのテストでは一律で焦点距離50mmレンズが使用されているためです。
センサーが小さいカメラほど同じ焦点距離50mmでも大きく写ることになるので、ファインダー倍率の数値も大きくなってしまいます。
そのため、全てのカメラのファインダー倍率をフルサイズ一眼に合わせる計算が必要になります。
数値は35mm判換算しよう
使っているカメラがフルサイズ一眼であれば、仕様表に書かれたファインダー倍率の数値をそのまま理解すればOKです。
ところが、先ほど説明したようにAPS-C機やマイクロフォーサーズ機のカメラの場合はセンサーが小さいので数値を35mm判換算しないと実際に見える大きさがわかりません。
35mm判換算をすることでフルサイズ一眼に揃えて再計算されるため、正確な数値を出すことができます。
計算方法
35mm判換算の計算式は難しくありません。センサー別にまとめてみました。
- <フルサイズ機>
倍率そのまま - <APS-C機(ニコン・ソニー・ペンタックス)>
倍率÷1.53 - <APS-C機(キヤノン)>
倍率÷1.61 -
<マイクロフォーサーズ機(オリンパス・パナソニック)>
倍率÷2
ニコン機を計算してみる
例えばニコンのAPS-C機「D3400」を使っている場合、ファインダー倍率は「約0.85倍」と書かれています。
計算式は「1.53」で割ることになり、
0.85÷1.53=0.555…となります。
この結果「D3400」のファインダー倍率(35mm判換算)は、「約0.56倍」とわかりました。
別の機種も計算してみる
「D3400」の一つ上位の「D5600」も計算してみます。
「D5600」のファインダー倍率は「約0.82倍」です。
計算式は、0.82÷1.53=0.5359…となります。
「D5600」のファインダー倍率は「約0.54倍」ということがわかりました。
「D5600」は「D3400」の上位機なのですが、ファインダーは下位の「D3400」の方がわずかに広くなっています。
キヤノン機で計算してみる
キヤノンの「kiss X9」を計算してみます。
キヤノンは「1.61」で割ります。
「kiss X9」のファインダー倍率は「約0.87倍」です。
計算式は、0.87÷1.61=0.5403…となり、「約0.54倍」となりました。
「kiss X9」の一つ上位機の「kiss X9i」のファインダー倍率は「約0.82倍」なので、計算すると「約0.51倍」となります。
ここでも上位機との逆転現象がおきています。
マイクロフォーサーズ機で計算してみる
マイクロフォーサーズの割る数字は「2」です。
オリンパス・パナソニックはミラーレス一眼のため、光学ファインダーではなく電子ビューファインダーを使用しています。
そのため入門機でもファインダーが広くなっています。
まずオリンパスの「E-M10 MarkIII」です。
ファインダー倍率は「約1.23倍」なので、
1.23÷2=0.615となり、「約0.62倍」となりました。
先ほどのニコン、キヤノンの入門機より少し広くなっています。
次にパナソニックの「GX7MK2」です。
ファインダー倍率は「約1.39倍」なので、
1.39÷2=0.695となり、「約0.7倍」とわかりました。
中級機以下のモデルとしては大きなファインダーとなっています。
ソニー機も計算してみる
ソニー機も入門機はミラーレス一眼になっています。ニコンと同じく「1.53」で割ります。
「α6300」の場合、ファインダー倍率は「約1.07倍」になります。
計算式は1.07÷1.53=0.699…となり、「約0.7倍」となります。
この機種も大きなファインダーとなっています。
35mm判換算の計算式
先ほどニコン・ソニー・ペンタックスは1.53、キヤノンは1.61で割ると説明しました。
しかし厳密には同じメーカーのAPS-C機でも機種によってセンサーサイズがわずかに異なることがあります。
そのためそれぞれの機種で正確にファインダー倍率を出す場合は、少し複雑な計算が必要になります。
まずそれぞれの機種のセンサーの縦横サイズから対角線を割り出します。
(センサーサイズは仕様表に書かれてあります)
対角線の計算は、「√(底辺2乗+高さ2乗)」で出すことができます。
そしてフルサイズセンサーの対角線が43.2mmなので、「43.2mm÷対角線」を計算します。
これがファインダー倍率を割る数字になります。
現時点(2018年1月)の最新機種であればニコン・ソニー・ペンタックスは「1.53」、キヤノンは「1.61」になる機種が多いので、この数字で正確に計算ができます。
視野率とは?
視野率とは、写真に写る範囲がどのくらいファインダーで見えているかの割合になります。
100%であればファインダーで見えた範囲がそのまま写真になります。
入門機に多い視野率95%の場合はこのようになります。
わずかですが、ファインダーで見えていない部分が写真には現れています。
例えば、「ギリギリ電柱を隠してフレーミングしたのに、写真では写ってしまう」
というようなことも起こります。
そのため100%のカメラが理想ということになります。
ただ100%を実現するには一眼レフの場合はペンタプリズムという重たいガラスの塊を使用したファインダーが必要になります。
中級機~高級機はこのペンタプリズムを採用していて、中級機の視野率は97%~100%、高級機は100%を達成しています。
実際にはセンサーに入る像とファインダーで見える像を完全に一致させるのは非常に難しいようです。そのため仕様表には「約100%」というように誤差があることを示す表記となっています。
一方、入門機は鏡を数枚組み合わせたペンタミラーを採用していて、視野率は95%くらいになります。
ただ、上級者でも95%ならわずかの差なので特に困らないという人もいますし、もしわずかに余計な物が写っても、トリミングすればカットできます。
視野率の問題より、入門機はファインダー内が小さいのでそのストレスの方が大きいかもしれません。
ペンタックスの一眼レフは、入門機からペンタプリズムを採用しているため視野率100%のファインダーとなっています。その反面、入門機としてはボディの重量があります。
ミラーレス一眼は100%
一眼レフは光学ファインダー(OVF)が搭載されているため、ペンタミラーのファインダーだと視野率の問題がありました。
しかしミラーレス一眼は電子ファインダー(EVF)になっているので、ほとんどの機種が100%になっています。
これはセンサーで受けた像をそのままファインダーに表示しているので、ほぼ誤差なく100%を達成できるためです。
ファインダー倍率ランキング
最新モデル(2018年1月時点)の中から、ファインダー倍率ランキングを作成してみました。
機種名 | 倍率 | |
---|---|---|
1位 | α99II (EVF) |
約0.78倍 |
2位 | α9 (EVF) |
約0.78倍 |
3位 | D850 (OVF) |
約0.75倍 |
機種名 | 倍率 | 倍率(35mm判換算) | |
---|---|---|---|
1位 | FUJIFILM X-T2 (EVF) |
– | 0.77倍 |
2位 | α6500、α6300、α6000 (EVF) |
約1.07倍 | 約0.7倍 |
3位 | D500 (OVF) |
約1.00倍 | 約0.65倍 |
機種名 | 倍率 | 倍率(35mm判換算) | |
---|---|---|---|
1位 | LUMIX G9 (EVF) |
約1.66倍 | 約0.83倍 |
2位 | LUMIX GX8 (EVF) |
約1.54倍 | 約0.77倍 |
3位 | LUMIX GH5S (EVF) |
約1.52倍 | 約0.75倍 |
上位だけあっていずれもかなり大きなファインダー像となっています。
特徴としては、電子ファインダー(EVF)の方が光学ファインダー(OVF)より有利になっています。
ただ電子ファインダーにはデメリットがあり、高級機でないと連写をした際にブラックアウトして画面が見えなくなります。
またファインダー映像の画素数が低い機種は、見え方に違和感を感じることもあります。
一方でメリットとしてはホワイトバランスの変化がファインダーで把握できたり、暗所でも明るく見えやすいなどがあります。
このような電子ファインダーの特徴を把握してから購入することをおすすめします。
メーカー別ファインダー倍率一覧
その他のモデルをメーカー別にファインダー倍率をまとめてみました。
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
D3400 | 約0.56倍 |
D5300 | 約0.54倍 |
D5600 | 約0.54倍 |
D7500 | 約0.61倍 |
D500 | 約0.65倍 |
D750 (フルサイズ) |
約0.7倍 |
D850 (フルサイズ) |
約0.75倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
EOS Kiss X9 | 約0.54倍 |
EOS Kiss X9i | 約0.51倍 |
EOS 9000D | 約0.51倍 |
EOS 80D | 約0.59倍 |
EOS 7D Mark II | 約0.63倍 |
EOS 6D Mark II (フルサイズ) |
約0.71倍 |
EOS 5D Mark IV (フルサイズ) |
約0.71倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
OM-D E-M10 Mark III | 約0.62倍 |
OM-D E-M5 Mark II | 約0.74倍 |
OM-D E-M1 Mark II | 約0.74倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
LUMIX GX7MK2 | 約0.7倍 |
LUMIX G8 | 約0.74倍 |
LUMIX GX8 | 約0.77倍 |
LUMIX G9 | 約0.83倍 |
LUMIX GH5S | 約0.76倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
α6000 | 約0.7倍 |
α6300 | 約0.7倍 |
α6500 | 約0.7倍 |
α77II | 約0.71倍 |
α7II (フルサイズ) |
約0.71倍 |
α7R III (フルサイズ) |
約0.78倍 |
α7S II (フルサイズ) |
約0.78倍 |
α9 (フルサイズ) |
約0.78倍 |
α99II (フルサイズ) |
約0.78倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
K-S2 | 約0.63倍 |
K-70 | 約0.63倍 |
KP | 約0.63倍 |
K-1 (フルサイズ) |
約0.7倍 |
機種名 | 倍率(35mm判換算) |
---|---|
FUJIFILM X-T2 | 0.77倍 |
FUJIFILM X-Pro2 | (EVF)0.59倍、(OVF)約0.36倍/約0.60倍 |
FUJIFILM X-T20 | 0.62倍 |
FUJIFILM X-E3 | 0.62倍 |
まとめ
- フルサイズ以外は35mm判換算をしないとわからない
- ペンタプリズムはファインダー像が大きい
- ミラーレス一眼は視野率100%